多くの需要家が“見える化”によって省エネ意識を高め、全体需要が低下すれば、変電所単位の一律の計画停電は不要になる。病院や交通施設などへ優先的に給電することも可能だ。経済産業省も2020年代の早い時期に全需要家へスマートメーターを導入する方針を打ち出した。これを受け、東芝、パナソニックは家庭用蓄電池の販売を強化しており、セキスイハイムは業界初のスマートハウスを発売、さらにトヨタ自動車は米マイクロソフトと車載・住宅用情報システムの開発で提携した。
各社の一連の活動は、スマートグリッドの需給調整の効用だけを狙ったものではない。人々のライフスタイルを反映する電力使用データをインターネットへ開放すれば、個々の需要家に適した医療や介護、教育、娯楽などの情報サービスも提供できる。それを事業化し、付随する広告収入を狙っているのがネット検索最大手、米グーグルにほかならない。
しかし、スマートメーターから得られる電力使用データは、課金の基となる個人情報である。欧米でもセキュリティー確保の観点から、電力会社の通信ネットワークでやり取りされ、インターネットには開放されていない。「賢い電力網」普及には、なお課題が残されている。