デフレからの脱却を狙う政府が取るべき道

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中央銀行の独立性とルールvs.裁量

この論理から言えば、逆説的であるが、政府や議会からの中央銀行の独立性が失われれば、インフレ抑制に対する信認が失われ、インフレ率が高まってくるかもしれない。しかし、インフレの抑制を目標として金融政策を行っているかぎりは、インフレが発生するとは家計や企業は予想しないであろう。したがって、失われた20年間のなかで、デフレから脱却し、インフレを起こしたい政府としては、インフレを抑制するという中央銀行の金融政策の目標を変更させるか、あるいは、中央銀行の金融政策の目標設定における独立性を抑え、インフレ・ターゲットというルールを導入することによってインフレを起こしたいのである。

一方において、インフレ・ターゲットというルールを導入することは、中央銀行から金融政策の目標設定における独立性が失われたとしても、政府や議会が裁量的に金融政策を行うことにはならない。その金融政策ルール、具体的には、インフレ・ターゲットの目標インフレ率を決めるのは、中央銀行ではなく政府や議会ではあるが、そのルールに基づいて金融政策が実施される。もちろん、その目標に向かって金融政策を運営するのは中央銀行であり、政府や議会の裁量的な政策のインセンティブは、インフレ・ターゲットの目標インフレ率設定というルール化によって排除される。

このように、政府や議会が目標インフレ率を設定するものの、インフレ・ターゲットというルールに基づく金融政策ルールを導入することは、自らの手を縛ることによって、インフレを起こしながらも、金融政策の信認を維持できるかもしれない。一方、政府や議会が決めたインフレ・ターゲットの金融政策ルールと目標インフレ率の下で、中央銀行が最適な金融政策手段によって金融政策を実施することが、現在、求められているのかもしれない。

(図版作成=平良 徹)
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