また、この福井県でユニークな点は3世代同居の割合が高いことである。05年時点で全国1位の山形の24.9%に次ぐ20.2%で第2位になっている。3世代同居であれば、祖父母が孫の面倒を見て、両親は安心して共働きをすることができる。それに1人当たりのやりくりのコストは、多くなった人数で頭割りするので当然低く抑えられる。だから楽に貯蓄ができるのだろう。

何も無理矢理に3世代同居をおススメするつもりはないが、これから日本人の生活は少し前に大ヒットした映画「ALWAYS三丁目の夕日」のような昭和30年代のスタイルに回帰していくように思う。一家が茶の間に揃って食事を取り、1台のテレビで皆が同じ番組を見ながら楽しむ。つまらない外食はせず、1つの部屋に集まることで余計な光熱費もかけない。つましい生活だが、そこには連帯感で結ばれた温かい家庭が確かに存在していた。

最近会ったあるお金持ちの人は、「景気がいいときにはお金を貯めなさい。そして景気が悪くなったときにはお金を使いなさい」という、子どものときから何度もお母さんにいわれた教えを忠実に守ってきたそうだ。景気がいいときは収入が増え、貯蓄に回せる額も大きくできる。そうやって貯めたお金を、モノの値段が安くなったときに投資すれば、儲けられることは自明の理。まさに逆張り発想による“金持ち母さん”の教えなのだ。

イソップ童話の「アリとキリギリス」でいえば、夏にせっせと働き、冬の巣ごもりに備えて蓄えを増やすアリのようになりなさいということなのだろう。もしかして、年収800万円というラインはアリがキリギリスに変身する転換点であるのかもしれない。しかし、キリギリスになった途端に家計破綻という奈落の底へ落ちていく。たとえアッパー・ミドルになることができたとしても、賢明なアリさんのままでいたいものである。

(構成=伊藤博之 撮影=小原孝博、飯田安国)
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