年収800万円以上アッパー・ミドルの家計が急速に悪化している。このままだと彼らの行き着く先はいったいどこになるのか?

予想される家計に対する影響を考えてみよう。年収1000万円のAさんと、同500万円のBさんがともに10%の賃金カットを受けたとする。年収減の金額はAさんが100万円、Bさんが50万円で、年収ダウンの幅はAさんのほうが大きい。「でも、もともと年収が高くて余裕があったのだから、多少下がったって十分に対応できるのでは」と思う人が多いはず。しかし、それは間違い。Aさんの受ける痛手のほうが大きくなるのだ。

それというのも、年収が高くなるほど日常生活のなかで無駄遣いをする人が増え、家計に余裕がなくなっているのが実態だからだ。1万世帯以上の家計診断を行ってきたなかで私が見出したセオリーの1つが、「ご主人の年収が800万円を超えると無駄遣いが始まる」ということ。どうやらこの一線を越えると、「オレは人並み以上に稼いでいる」といった“アッパー・ミドル”の意識が芽生え、「少しは余裕があるのだから」といって財布の紐を一気に緩めてしまうようなのだ。

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図表1 年収1000万円以上でも20人に1人は貯金ゼロ

もちろん、そうなれば彼らが貯蓄に回す金額は増えない。Bさんが年収の10%に当たる50万円を貯蓄に回していたとしよう。では、Aさんも同じ10%の100万円を貯金しているかというと、そうはいかない。せいぜいBさんと同じ金額の50万円というのが私の実感である。

実際に高所得者層で貯金ゼロという人が少なからず存在している。図表1を見てわかるように、年収750万~1000万円未満で14.2%、1000万~1200万円未満で6.5%、同1200万円以上でも何と4.9%が無貯蓄なのだ。しかし、実態はもっと厳しいというのが私の率直な見方で、750万~1000万円未満クラスだと20%近くがほとんど貯蓄を持っていない。無防備のまま賃金カットを受けたら、たちまち現在の生活水準など維持できなくなる。