「お金のいい話」という特集にあわせて、本誌編集部は経済学者の成田悠輔氏に取材依頼した。するとインタビューは「破滅的」な方向に展開した。成田氏はなぜこんな話題を持ち出したのか――。

※本稿は、雑誌『プレジデント』(2025年7月4日号)掲載の記事に大幅な加筆・修正を加え、再編集したものです。

雑誌市場は「末期の炭鉱」

雑誌『プレジデント』の特集「お金のいい話」に関する前向きでポシティブな話を、とご依頼をいただきました。私は性格の悪さにだけは自信があり、ポジティブな話は何ひとつ思い浮かびませんでした。

その代わり、ネガティブで、後ろ向きで、破滅的なことをお話ししたいと思います。いまどき雑誌の活字インタビューなんて誰も読んでないでしょうから、どんな暴言を吐いても炎上しないはずです。

結論:日本の雑誌産業はまもなく滅びるでしょう。

ビジネス誌だろうがファッション誌だろうがジャンルに関係なく、です。日本の雑誌市場の最盛期は30年ほど前(1997年)で、売上は年間1兆5千億円を超えていました(出版科学研究所調べ)。当時の人口は1.26億人ですから、1人月千円くらい。毎月数冊くらいは紙雑誌を買うのがごく普通だったわけです。

それが2022年には5000億円を割っています。たった20年ちょっとで3分の1以下。こんな勢いで衰退する産業は滅多にありません。末期の炭鉱みたいです。

「誰もが知っている作家」は誰もいなくなった

雑誌はもう変わり者の趣味です。コンビニや駅の売店でも雑誌棚が消しゴムマジックのように消えています。最後の砦は本屋ですが、その本屋自体を駅前や街中で見かけなくなりました。実際、書店の数もこの四半世紀で半減以下になっています。本屋さんに行くのは、少数の物好きな本好き(たとえば私)だけになりました。誰もが名前を知っている雑誌も作家もなくなりつつあります。というか、たぶんすでにないのでしょう。

産業・ビジネスとしての雑誌は滅び、今後はごく少数の物好きが趣味としてやるものになるでしょう。採算と関係なく盆栽や骨董をやったり、お客さんが一時間に一人来るだけの小さな和菓子屋さんを続けたりする人がいるのと同じように。

さらに無駄に敵を増やすために付け加えます。滅ぶのは新聞も同じです。新聞の発行部数の絶頂は雑誌と同じ97年の5376万部ですが、24年には2662万部と半減以下になっています(日本新聞協会調べ)。

産業やマスメディアと言えるようなものとしては、日本の新聞も滅びるでしょう。そして妙に自尊心に満ちた上から目線の中高年が独特の作法の作文競争をする不思議な老後部活のようになるでしょう。