日本には7人の現役JAXA宇宙飛行士がいます。1999年に宇宙飛行士候補者に選出されたベテランの古川聡さん、星出彰彦さん、2009年選出で中堅として支える油井亀美也さん、大西卓哉さん、金井宣茂さん、2023年選出で宇宙でのミッションは未経験のフレッシュな米田あゆさん、諏訪理さんです。
宇宙飛行士の業務の中でISS(国際宇宙ステーション)長期滞在はほんの一部分ですが、微小重力環境下で将来の惑星探査の基礎となる実験や技術実証を行う重要な仕事です。現在は大西卓哉さんがミッション実施中で、次回は油井亀美也さんが早ければ7月から約半年間滞在します。
9日からアメリカでISS滞在前の最終訓練に取り組む油井さんは、直前に約1週間帰国しました。4日に都内で行った記者会見ではISSを「平和の象徴」と呼び、「(地上から)空を見上げればISSが見えて、色々な考えの色々な人種の人たちが、あそこで生活をして仲良く成果を上げているというところが、人類の明るい未来を象徴している」と力を込めました。
さらに油井さんは「2015年の最初のISS滞在は『宇宙に行きたい』と願い続けてから35年後だった」と話し、「自分を信じて亀のようにコツコツ努力することの大切さ」を強調しました。
会見直後の油井さんに行った独自インタビューの後編は、その人柄に触れ、コミュニケーションと成功の秘訣に迫ります。
――記者会見では、子供たちへのメッセージとして「自分は天体が好きで、コツコツ勉強して少しずつ成長した。好きっていうことは才能なので、自分に能力があると信じて『好き』を頑張れば未来は開ける」という趣旨のことを話されていました。とはいえ、油井さんも上手くいかなくてくじけそうになったときはあると思います。どうやって気持ちを切り替えて、克服していったのですか。
【油井】私自身はそんなに強い人間ではないので、くじけそうになったことはたくさんあります。そういう時を思い出すと、自分でなんとかしたことは少なくて、だいたい他の人に助けていただきました。
「諦めるな」とか「君はもっとできるはずだ」という言葉をいただいては素直に聞いて、「じゃあ、もう少し頑張ってみるか」という感じで実際に頑張っていけました。
助けていただいたことは本当にありがたく思っています。一方、助けてもらうには良好な人間関係を築いておかないといけないですし、そもそもやりたいことを他の人に率直に話しておかないと「私が何をやりたいか」を理解してもらえないですよね。
だから、コミュニケーションをとって色々な人と仲良くしておくことで、巡り巡って自分が困った時に助けてもらえる、乗り越えられるということかと思っています。

