鯨井は「777」で得た知見、経験をMRJプロジェクトに反映したいと考えている。同様に、長崎における大型客船の建造(前号で紹介)にも、三菱重工業が受注した台湾新幹線でえた知見、経験が反映されている。「MRJ」にも、台湾新幹線の知見、経験を反映させるため、台湾新幹線で腕を振るった山口武生を、(MRJを製作する三菱航空機の)常務として迎え入れている。三菱重工業が関わった中東初となる都市鉄道ドバイメトロの技術者も、「MRJ」に投入するなど、「MRJ」には、三菱重工業が「陸・海・空」でえたノウハウが「総結集」されている。
昨年6月を過ぎた頃、当時の大宮から宮永は、こう聞かれている。
「日立(製作所)との火力発電事業統合の件、どう思う」
宮永は、躊躇することなく、答えた。
「私はやったほうがいいと思います」
宮永は、先述の通り、製鉄機械の分野で「三菱日立製鉄機械」の合弁会社立ち上げを成功に導いた。
「三菱重工業と日立製作所が一緒になって、うまくいくのか」
という周辺の雑音も聞こえてきたが、信念を通して、合弁会社を収益企業へと育て上げた宮永からすれば、「火力発電システム事業」の分野でも、同じやり方ができれば、うまくいく自信があった。ある程度の事業規模がないと、世界の競合と戦えないことは、明らかだ。
日立製作所との火力発電事業統合の舞台となるのが、三菱重工業の利益の80%を稼ぎだす「屋台骨」の原動機事業本部である。事業統合により、両社を合わせた火力発電事業の売り上げ規模は、1兆円の大台に乗る。