各ドメインで、1兆円程度の売り上げ

三菱重工業 常務執行役員原動機事業本部長 
和仁正文

火力発電システム事業のトップである和仁正文常務執行役員原動機事業本部長は、今回の日立製作所との統合について、

「様々な補完関係が生まれ、事業規模の拡大につながる」

と期待を寄せる。だが、三菱重工業、日立製作所の火力発電事業を統合しても、米国のGE、ドイツのシーメンスの事業規模に及ばない。

和仁は、三菱重工業に入社してから、長い間、プレゼンや見積もり、仕様など、客のニーズと擦り合わせを行う「技術営業」のような仕事に(長崎造船所には23年間在籍)、国内外で携わってきた。

図を拡大
ガスタービンのシェア

和仁は、GE、特にシーメンスに対抗する術をずっと考えてきた。和仁には、小型から大型までフルラインアップのガスタービンを揃えるシーメンスが、「厚く、高い壁」と感じる時期もあったという。戦後しばらくの間、占領軍(GHQ)により航空ジェットエンジンの開発が許されず、戦前からの技術的、人的な継承ができなかった。そのため、厳しい環境下で、海外展開を余儀なくされた原動機事業が、海外展開に乗り出したとき、すでに欧米市場は、GEとシーメンスに席巻されていた。三菱重工業が得意とし、世界の経済を牽引するアジア市場においてもGE、シーメンスが強力なライバルである構図に変わりない。

兵庫県高砂市にある高砂製作所をガスタービンの主力工場とする三菱重工業は、今やGE、シーメンスに次ぐ「第3勢力」に成長した。しかし、三菱重工業のガスタービンは、大型中心のため、商談が中小型のときは、苦戦した。そこで、昨年12月、中小型ガスタービンを、ラインアップに加えるために、EPC(設計、調達、建設)も手がけるPWPS(プラット&ホイットニー・パワーシステムズ)の買収に合意した。今回の事業統合で、日立製作所の中小型のガスタービンも加わり、フルラインアップが完成する。