復職後に厳しく叱責し訴えられたケースも
解決策の1つは就業規則に「休職期間中は病気を治すのに専念する」という療養専念義務の規定を設け、勝手に海外旅行したりする行動に一定の制限を加えることである。休職期間の趣旨は病気を治すことにあり、もしちゃんと通院や投薬をしないのなら休職させる必要もない、というわけである。
このような規定がない場合、休職期間中の海外旅行に何らかの処分を下すことは難しい。現在、就業規則でこうした規定を設けている会社はあまりないが、うつ病の増加傾向を考えれば整備が必要だ。療養専念義務がない会社でも、休職期間に入るときに上司から「治療に専念してください」と話をしたり、メールを1本打っておいたりすれば念押しになるだろう。
注意を要するのは休職していた従業員が復職する場面である。以前のように働けるかといえばそうではなく、なかなか本調子に戻らず急に休んだり早退したりといった状態が続くケースは少なくない。
そうなると上司や周囲の同僚の仕事の負担が増えるので、病気であることは理解しつつも厳しい言葉や態度が出てしまう場合がある。復職したばかりの従業員からみれば、それは職場環境の悪化であり、再び病気がぶり返す原因にもなりかねない。これを理由に裁判所へ訴えられたケースもある。
その一方で詳しい事情に踏み込んではいけないというブレーキが働き、新型うつ病の従業員を放置して治外法権のような状態になっているケースも見られるが、これもよくない。病気が理由でコンスタントに働けないのであれば、治すための努力としてしばらく休むのか、あるいは業務を軽減し通院しながら治していくのかといった方針をきちんと本人と向き合って話し合う必要があるはずだ。
なお、休職期間は各社の就業規則で定められており、その期間はさまざまである。休職期間をとっても治らない場合は退職としている会社が多いが、業務が原因で発症した場合は労働基準法第19条の解雇制限により退職させることはできない。もし、うつ病に罹患した社員に休職期間を与えずいきなり解雇して裁判に訴えられたら、合理的な理由がないとして社員側が勝訴する可能性が高い。