「虎に翼」でも現代的なテーマを反映した変更が

近年の他の朝ドラではどうだったか。

2024年に高く評価された「虎に翼」(吉田恵里香脚本)では、日本で初めて女性として弁護士、判事、裁判所長を務めた三淵嘉子をモデルに、史実がアレンジされた。前半最大の改変は、主人公・寅子(伊藤沙莉)の父親(岡部たかし)が「共亜事件」という贈収賄事件で逮捕される展開である。この事件のモデルは1934年に実際にあった「帝人事件」と考えられるが、三淵嘉子の父・武藤貞雄は事件当時すでに台湾銀行を退職しており、一連の事件にその名は登場していない。三淵嘉子関連の書籍にも父が帝人事件に関与したという描写は出てこない。

「虎に翼」のモデルになった三淵嘉子(裁判官)、1938年ごろ
「虎に翼」のモデルになった三淵嘉子(裁判官)、1938年ごろ(写真=PD-Japan-oldphoto/Wikimedia Commons)

第二の改変は、「選択的夫婦別姓」をテーマとした結婚観の描写だった。ドラマでは寅子が戦死した最初の夫・佐田優三(仲野太賀)の姓を名乗り続け、再婚相手の星航一(岡田将生)との間では事実婚を選択する展開が描かれた。寅子には、入籍によって姓が変わると、それまでの自分が消えてしまうという思いがあった。

選択性夫婦別姓について考えさせられる展開

しかし、史実では三淵嘉子は再婚によって三淵姓になった。

実際の三淵嘉子は1941年に武藤家の下宿人で書生だった和田芳夫と結婚、一子をもうけたが、夫は戦病死。その後、1956年に最高裁調査官であった三淵乾太郎と再婚している。三淵乾太郎も前妻を病気で亡くし、1男3女の子持ちだったため、お互いに連れ子がいる状態での再婚だった。

嘉子は、裁判官として対外的にも使ってきた和田姓を変えたくなかったようだが、その当時はほとんどの女性が結婚で夫の姓にしたのと同じように、三淵姓に変更した。そういった史実を70年後の今、「実現すべきだ」という声が多数派になっている選択的夫婦別姓を採り入れてアレンジし、ヒロインの再婚に現代性を持たせた。