インテリジェンスの世界では、何を情報源としているのか。東京工科大学教養学環教授の落合浩太郎さんは「国家の命運を左右する最高指導者の健康状態は、各国の情報機関が喉から手が出るほど欲しがる情報だ。そのため海外訪問では北朝鮮の金正恩総書記は『専用トイレ』を持参し、習近平国家主席も会談後に徹底していることがある」という――。

※本稿は、落合浩太郎『面白すぎて時間を忘れる「スパイ」の世界』(三笠書房)の一部を再編集したものです。

窓から光の入る、無人の会議室
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海外訪問で生体情報を残さない習近平

インテリジェンスの材料は、盗聴した通信や極秘文書だけではない。実は、人間の「身体」そのものも重要な情報源となる。

とりわけ国家の命運を左右する最高指導者の健康状態は、各国の情報機関が喉から手が出るほど欲しがる情報だ。病気の進行具合や服薬状況、精神状態、さらには余命の見通しまで把握できれば、外交交渉や安全保障戦略に大きな影響を与えうる。

そのため世界の指導者たちは、自らの生体情報を守るために日々、驚くほど神経を尖らせているのだ。

北朝鮮の金正恩総書記が、海外訪問の際に「専用トイレ」を持参していると複数のメディアで報じられているのも、その象徴的な例だ。仮に排泄物が第三者の手に渡れば、現代の分析技術によって、持病や服薬状況まで推測されかねない。

こうした姿勢は、中国の習近平国家主席についても同様だ。外国訪問の際には、会談終了と同時に警備員が室内に突入し、彼が触れた椅子やテーブルをすべて消毒して、生体情報を残さないようにしているという。

たとえ表向きは同盟国であっても、裏では互いの情報を探り合う。インテリジェンスの世界では、それが当たり前なのである。