50年の改良を重ねた「わた」に戻す特殊技術

さらに、思いがけないところでは「術後の傷にやさしく、愛用している」という乳がん患者からネットの書き込みが入るようになる。乳がんの治療にあたる病院や皮膚科医院などを通して情報発信されるようになり、年間10万枚を安定的に生産できるようになった。5年前、評判を聞きつけた台湾の卸業者から問い合わせを受け、台北市内の百貨店や大学病院向けにも出荷を始めたという。

フリープには、スマイルコットン社製(三重県川越町)のコットン素材が使われている。同社2代目・片山卓夫さんが1973年に開発して以来、50年にわたって改良を重ねてきた。特殊な生地の製造工程はこうだ。

同じ容量でも一般の綿天竺(右)に比べてかさが大きいスマイルコットンの綿天竺
筆者撮影
同じ容量でも一般の綿天竺(右)に比べてかさが大きいスマイルコットンの綿天竺

紡績会社から仕入れた糸を、りぐせを残したままほぐして「わた」に近い状態に戻すところから始まる。その柔らかい繊維の束がばらけないよう加工を施し、生地を編み上げていく。「わた」の状態になった繊維は間に空気を含み、洗濯を繰り返してもふわりとした肌触りが保たれる。洗うと硬くごわつくコットンの特性を覆し、軽くて丈夫で保湿性にも優れた素材を誕生させた画期的な技術だ。