2国間の経常収支の赤字黒字に意味はない

製造業地帯の喪失によって、そうした古き良きアメリカは失われてしまった。だから、アメリカ国内に再び製造業を取り戻さなければいけない。そのためには、外国から安い製品が入ってくるのを防がなくてはいけない――そういうロジックでトランプ政権は貿易赤字批判に向かっているのです。しかし、このあたりから政策としての整合性がかなり怪しくなってくる。目的は正当ですが、手段が合理的ではない。

ペンシルバニア州ベツレヘムの放棄された製鉄所
写真=iStock.com/Judith Rawcliffe
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現在のアメリカは、海外に対して膨大な経常収支(貿易収支+サービス収支+所得収支の合計)の赤字を抱えています。第1の問いは、経常赤字である状況はそもそもアメリカにとって悪いことなのか、ということ。そしてもう一つの問いは、2国間の経常収支が赤字であることに、なにか意味があるのかということです。

まずは答えが明確な第2の問い、つまり2国間赤字の無意味さからお話をしていきましょう。例えば、私はいつも近くのスーパーマーケットで買い物をし、給与は大学から受け取っています。つまりスーパーマーケットとの間の私の収支は常に赤字であり、大学に対しては常に黒字です。このとき、スーパーマーケットに対して赤字であることを、私は問題視すべきでしょうか?