ノマドの増加:新規開業者の4人に1人が「50歳以上」
専用のオフィスを持たない、あるいは他の事業者と共有する個人の小規模事業者、いわゆるノマドが増えている。
ノマドを始める契機は、勤めていた会社を辞めて事業を始める場合と、本業とは別にサイドビジネスとして行っている場合の2つがある。統計数字上にはっきりと表れたわけではないが、シェアオフィスの需要が伸びていることが、その増加の証左となろう。
ノマドの典型例は、新古書店で書籍を仕入れ、アマゾンやヤフーのオークションで転売する、あるいはスマートフォン用のアプリの製作、オンラインゲーム用の有料アイテムの転売といったインターネット関連ビジネスだ。クラウド・コンピューティングの普及によってサーバーを自前で購入する必要がなくなり、初期投資のハードルが劇的に下がったことも含めて、起業環境が大きく変わりつつあることがノマドの増加を後押ししている。
ネット関連以外でも、主婦やシニア層など、これまではあまり見られなかった新しいタイプの起業家が増えている。日本政策金融公庫の調査(11年8月)によると、新規開業者に占める50歳以上の人の比率は、91年度には9人に1人にすぎなかったが、10年には4人に1人に達したという。
主婦や単身女性が、女性ならではの視点を活かして起業するケースも目立つ。そうした事例の1つに、駅に貼られている「乗り換え便利マップ」を開発したナビットがある。創業者の福井泰代氏が、駅でベビーカーを引きながら考えついたものとされている。
今後は、こうした小規模事業者を狙った新しいビジネスやサービスも生まれてきそうだ。シェアオフィスのほか、たとえば確定申告のための簡便な申告スキームの提供なども考えられる。
(構成=久保田正志 写真=PANA、PIXTA)