相続税の課税対象拡大:不動産ビジネスの追い風になりそう

相続増税は既定路線/バブル期以降に節税目的で購入した不動産の価格が低迷、かえって大きな損失を出した例も多い。(PIXTA=写真)

「税と社会保障の一体改革」では、相続税見直しが予定されている。

相続税ではこれまで「5000万円+1000万円×法定相続人」の基礎控除が認められていたが、これを「3000万円+600万円×法定相続人」に大きく減額。また相続税の最高税率は50%から55%に引き上げられ、さらに死亡保険金の非課税対象も縮小されることとされていた。これにより、相続時の課税対象は一気に増えることになる。

実際には、一体改革じたいが先送りされてしまったものの、今後、相続税が増税される方向で改定されることは、既定路線と言っていい。

相続対策は、税理士やファイナンシャル・プランナーなどさまざまな業種で重要なビジネスとなっているが、この相続税見直しにより、一層の活発化が予想される。

典型的な相続対策が不動産取得である。現金は全額が相続税の対象となるが、不動産価格の計算には路線価が用いられ、実勢の取引価格より低めの評価となる。更地よりも賃貸住宅などの建物が立っていると、相続税評価額としてはさらに低くなるため、借金をして自宅をビルやアパートに建て替えるという相続対策が、バブル期の都心部などで広く行われた。

一方で不動産以外の金融資産がほとんどない状態で相続税が課税されると、納税資金を工面するために、不動産が売却されることが多くなる。課税対象が増えるほど、売買される土地も増えるわけで、不動産ビジネスにはどちらの意味でも追い風となりそうだ。