外務大臣 岸田文雄(きしだ・ふみお)
祖父からの政治家3代目。高級官僚や実業家もひしめく名門の家系。宮沢喜一元総理も親戚だ。1993年初当選。2007年、第1次安倍内閣で初入閣、11年には国会対策委員長に就任、そして外相と順当に階段を上っている。去年10月には、池田勇人元首相が創設し総理大臣を多々輩出してきた宏池会を古賀誠氏から継承した。
2世、3世には「七光り」へのコンプレックスからか背伸びする人も多いが、その傾向に反して、物静かで堅実。
「家が一番ほっとする」と家庭的。政治では「強すぎるリーダーシップ」を警戒する。「バランスが大切。謙虚さを忘れた権力は独裁になる」と語る。役所とのバランスに配慮してか、記者会見では役人が作った「虎の巻」に常に目を落とす。目を離しても原稿を一字一句思い出しながら話すほど慎重だ。
組織のバランスにも配慮する。上の指示には逆らわない。去年の党総裁選では当時の派閥トップ古賀氏の指示もあり、安倍氏のライバル石原伸晃氏の推薦人に名を連ねた。安倍政権で反主流に身をやつすかと思いきや入閣。その度量に恐れ入ったか、今度は安倍総理に忠実に仕えている。総理官邸より先に情報を出すことは一切ない。次を狙う野心も見えない「出ない杭」だから誰にも打たれない。傷はつかぬが、存在は安倍総理の影に隠れたままだ。
ところが一点、溝がある。安倍総理は先々、憲法改正、集団的自衛権行使容認を狙っているが、岸田氏の根っこはハト派だ。以前から「勇ましい発言が目立つが、しっかり吟味が必要だ」と慎重だった。今も「内閣全体で取り組む課題」と述べるに止めている。今年の参院選で自民党が勝利すれば、安倍総理は一気に強硬路線に舵を切る可能性がある。そのときこそ「出る杭」にならなければ吟味が深まらない。
(PANA=写真)