「ヒット現象の数理モデル」は、1人1人の購買意欲、つまり「この商品を買おうかな」という気持ちに焦点を当てています。数式の左辺が購買意欲を表し、右辺は「宣伝・報道」「直接コミュニケーション」「間接コミュニケーション」といった項目で成り立っています。

実はクチコミによる数理モデルは1960年代から考案されていたのですが、それは「宣伝・報道」と「直接コミュニケーション」の2つからなる数式で表されていました。そこに間接コミュニケーションという新しいクチコミの概念を加えたのが、私たちの数理モデルです。

間接コミュニケーションに関しては、直接コミュニケーションをしている人たちの会話を第三者がある確率で漏れ聞いて、それに影響を受けるとして式を立てました。物理学では3つの電子(粒子)が一度に影響を及ぼし合うという意味で「3体相互作用」と呼びます。間接コミュニケーションは、いわば「3人相互作用」であると考えて数式化しています。これまで、さまざまな映画について「ヒット現象の数理モデル」による購入意欲の計算値と購入実績を比較検証し、数理モデルの有効性を確かめてきました。

前述したように、左辺、つまり購入意欲はその製品や映画などにどれだけ関心を強く持つかを示す量で、これが実際の販売数や観客動員数、入場者数に比例します。では「この商品がほしい」といった心の中の意欲はどのように測ればいいのか。私たちはそれがブログの書き込みから測定可能と探り当てました。

ブログはその日その日に思ったことを自由に書く媒体です。たとえば映画では、公開前、公開後、鑑賞後とそれぞれのタイミングで、その作品についての期待や感想、評価が書き込まれている。書き込み件数の変動が、人々の関心度の増大や減少を表す指標になるのです。