▼慶應義塾大学大学院特任准教授 ジョン・キムさんからのアドバイス

成功するためには成功するまでやめないことである、という言葉があります。素敵な言葉ですが、私の考え方は違います。1カ所に根を生やすのではなく、学びの材料を吸収しきったら、いまいる環境から離れる。その繰り返しによって、人は自分というものになっていくのだと思います。

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周囲が反対しても、自分の道を進む

国や会社、専門領域など、世の中にはさまざまな境界が存在します。ただ、それらは人為的な分類にすぎません。人のつくった分類に順応して、その中で生き続けなければならない必然性はどこにもない。人生の指揮官は自分です。自分の意思で枠を飛び出していけばいい。

境界を越えた瞬間、強固に見えた境界線は消えてなくなります。後ろを振り返ると、自分の生きてきた軌跡だけが見える。そうやっていくつもの境界を越えることで、既存の分類に属さない代替不能な自分というものができあがっていく。

本来は経験者が越境する魅力を語るのが理想なのですが、残念ながら99%の人は境界を越えた経験がなく、逆にリスクを過大に言い立て、足を引っ張るほうに回ってしまいます。とくに親は要注意です。親は大いに尊敬すべきですが、やめなさいというに決まっていますから、進路相談の相手には向きません。

飛び出す選択が正しいかどうか、そこに気を取られて踏み出せずにいるのはもったいないことです。未来に対する選択には、不確実性が必ず伴います。ならば不確実なものを予測することに頭を悩ませるより、選択した後の軌道修正に自分のリソースを集中させたほうがいい。

選択は、最初の一度きりではありません。人生は選択の連続であり、目的地にたどり着くためには選択を日々積み重ねて軌道修正を行う必要があります。大切なのは、まずアクションを起こすこと。その一歩がデフォルト(初期設定)となり、次の選択につながります。

私はゼミの学生に次のようにエールを送っています。

「自分の選択が生む将来的な結果に対する全責任を、自分で負う覚悟で下した選択は常に正しい」

だから、将来に怯える必要はない。重要なのは、いまこの瞬間の選択に全力を尽くすことなのです。

慶應義塾大学大学院特任准教授
ジョン・キム

1973年、韓国生まれ。日本に国費留学。英オックスフォード大学客員上席研究員、米ハーバード大学客員研究員を歴任。独自の哲学と生き方論が支持を集める。

(図版※注:gooリサーチとプレジデント編集部の共同調査により、「時間とお金」に関するアンケートを、2011年11月15~17日の期間で実施。個人年収500万円台と1500万円以上のビジネスパーソン計613人の有効回答を得た。)

(構成=村上 敬 撮影=葛西亜理沙)
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