悩み通しの4年間…期待されることが怖かった

「そこから4年間はずっと悩み通しでした。自分はダメなんだ、もう辞めようと思って、週末のたびに転職サイトをのぞいていた時期もあります。何に対しても自信が持てなくて、解のない迷いにとらわれていました。精神的にはこの時期が一番つらかったです」

自ら望み、喜び勇んで飛び込んだ部署だったのに、待っていたのは厳しい現実。劣等感や自信の喪失といった精神的な壁を、一体どうやって乗り越えたのだろうか。

自ら望んだ異動は20年のキャリアの中で最もつらい4年間の始まりだった
撮影=プレジデントオンライン編集部
自ら望んだ異動は20年のキャリアの中で最もつらい4年間の始まりだった

きっかけは、人事部主催のマネジメント研修だったという。上司に参加を打診されたときは「私なんかにはもったいない」と後ろ向きだった。悩み続けるうちに自己評価がすっかり下がってしまい、このときはすでに何かを期待されることすら怖くなっていたのだ。

そんな気持ちのまま参加した研修で、ハーバード大の教授から「Failure is the key to success(失敗は成功への鍵)」という言葉を教わった。同時に、今は成功している人も、その裏では大きな挫折や失敗を経験してきていると知る。自分は失敗を恐れすぎていたと、ハッと気づいた瞬間だった。

部長に直談判

「当時、社内ではちょうど大手アパレルグループへの出資案件が進んでいました。これにぜひ関与したいと思い、研修から戻ってすぐ部長に『やらせてください』と直談判したんです」

ここで失敗しても、それを学びとして次に生かせばいいんだ──。そう自分に言い聞かせて、勇気を振り絞っての行動だった。

この勇気ある行動が、のちのキャリアを大きく転換させることになる。