このようにプレゼンターである自分自身の波乱万丈のストーリーを話しながら、聴衆の心を次第に掴んでいくのだ。世界中の人々の心をとらえて放さないハリウッド映画の普遍的なストーリー構成が、この5つのプロットに集約されているのである。

また、対顧客ということで考えれば、交渉をどう上手にまとめるかも重要な仕事になる。そこで思い出すのが、孫社長から「交渉の極意は『鯉とりまあしゃん』になることだ」と教えられたことだ。

これは福岡の筑後川で鯉を獲っていた漁師の実話で、真冬の漁期になると、彼は前の晩に精のつくものを食べて体を温めるようにしていた。そして翌朝、川辺の焚き火に当たり、さらに体温を上げてから鯉が潜んでいる川底へ潜る。すると、その温かさに引かれて鯉が寄ってきて、簡単に獲れたという。要は交渉相手から「ぜひ」と寄ってきてもらえるようにすることが大切だということだ。

そうした相手のメリットを考える際のポイントは何かというと、「相手にとって欠けていて、困っているものは何か」を考えることである。それを補うものを提供できれば、「ウイン-ウイン」の関係を構築できる。しかし、自社のリソースでは難しいケースもあるだろう。そのときには、自分の人脈から補完してくれそうなパートナーを探し、タッグを組んで交渉に臨んでもいい。

そこで役立つのが「人間関係密度シート」だ。まず、普段付き合いのある人たちを見渡して「官庁」「金融」「ベンチャー」「独立系プロ」といった業種や仕事の内容別に分類する。次にA4の中心点で交差するように線を引いて、それぞれの部類のエリアを割り振る。最後に、中心点に近くなるほど自分と関係密度が濃くなるように、個々人の名前を書き出す。そして何か困ったことがあれば、ここから協力してくれそうなパートナーやアウトソーシング先を探し出すわけである。