そして、「2人が仲良く歩いているとこを見た」といった“説明”が加えられたり、「実は私もそう思っていた」というような“支持”が与えられる。また、「そういえば、よく2人だけで打ち合わせをしているじゃないか」と“拡張”させてみたり、「あんなケバイ格好で会社に来るAさんの感覚が信じられない。それを許している社長もおかしい」と“誇張された感情”を示したりすることで真実味が増幅されていく。

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図2:ゴシップ・エピソードの基本的な構造

ここで図2の参加者の反応に“挑戦”が含まれている点に注意してほしい。「これはターゲットの評価に対する『私はそうは思わない』という反対意見の表明のことです。評価の段階でこの反応が返ってきたら、『そうなんだ』となって噂話は中断されます。最初に話を切り出した側は、相手が自分に同調してくれる仲間内の人間かどうかを準備の段階で確認しているのです。いい換えると、相手が自分の仲間のなかに入ってくれるかどうかで、『内集団』『外集団』が形成されるわけです」と川上教授は指摘する。

とくに「女性は噂好き」といわれるが、もしかしてこの“仲間づくりの機能”が関係しているのかもしれない。代表的な“女の園”である銀座のクラブでナンバーワンホステスも務める心理カウンセラーの塚越友子さんは次のようにいう。

「1つのクラブのなかにも、指名上位を競う『売り上げさん』を中心に複数の『ヘルプ』から構成されるホステスのグループがいくつもできています。そして『別グループのあの子はお客からお金を巻き上げる』『プレゼントをねだる』といった噂が常に店内を飛び交っている。グループをまとめる『集団の凝縮性』の要素には『保護』『安全』などとともに『共通の敵』があって、そうしたヤバイ噂をささやき合うことで共通の敵をつくり、お互いに仲間意識を高めているのです」

ことわざに「人の噂をいうは鴨の味がする」とあるように、噂、それもヤバイ噂ほど口にするのは楽しいものなのだろう。それで仲間内の結束を固められるのならなおさらだ。ビジネスマンが仕事帰りに、社内の噂話を肴にしながら楽しそうに1杯やるのも、そんな深層心理が働いているのかもしれない。