「ついこないだまでトップクラスの営業成績を表彰されていたのに、借金でクビが回らなくなったという噂がよく出る。なかには顧客から預かったお金に手をつけたっていうトンデモナイ噂も飛び出したりする。不動産仲介は顧客との信頼関係が大切で、そんな噂が立っただけでも左遷ものだ」と先の営業マンは話す。

どうやらこうした「不倫」と「借金」に関する噂はヤバイ噂の“双璧”のようだ。だが、それに限らない。某外資系システム会社では「あの子って頑固で、一緒に仕事をしていても協調性がなくって本当に困るわ。会議でも人の話を聞いていないでしょう」といった、どこにでもありそうな話が会社人生を左右するヤバイ噂に化けていく。

外資系の企業は、評価ポイントの下位10%の層の社員を入れ替えるような人事システムを採用していることが多い。そのクラスに入れられたら「クビ」ということだ。営業マンなら売り上げの数字が明確で公平な評価がしやすい。逆にシステム会社のようにチームでプロジェクトを担当するような場合だと、個々人を公平に評価するのは難しくなる。

そこで頭をもたげてくるのが「他人を蹴落としてでも自分が生き残ろう」というよからぬ気持ち。「何の協力もせず、仕事の手を抜いている」といったあらぬ噂をわざと広めて、評価者である上司の耳に伝わるようにする。協調性のなさを際立たせるために、ランチに誘わないことすらあるそうだ。こうなってくると、もうイジメというほかない。

また、こうした社内の裏事情をマスメディアなどの外部の人間に話したりすると、犯人探しを徹底的に行うという有名企業もある。犯人とおぼしき社員が浮かび上がってくると、確たる証拠がないにもかかわらず、閑職に左遷するなど人事で報復するという。何とも恐ろしい話である。しかし、なぜ人はヤバイ噂を口にしてしまうのだろうか。