※本稿は、島青志『いつもひらめいている人の頭の中』(幻冬舎新書)の一部を再編集したものです。
人間の脳とAIの決定的な違い
AIと比較して人間の脳がどれほど効率的なのか、事例で説明しましょう。
現在のAIといえば「ディープラーニング」の仕組みが知られていますが、2012年に最初のディープラーニング・システムが行ったことは、「猫の画像を正しく判断する」ことでした。
2024年にノーベル物理学賞を受賞したジェフリー・ヒントン博士率いるGoogleのチームは、YouTubeに上げられた約1000万枚の猫の画像を使って、AIに学習させたと言われています。
つまりAIが猫を認識するのに、それだけの学習が必要であるということですが、人間の子どもは、数匹の猫を見て教わっただけで、次から「猫」を認識できるようになりますよね。1000万匹対数匹。単純に言えば、私たちはAIの数百万倍も学習効率が良いのです。
また、AIと人間の闘いでよく知られているのは、囲碁や将棋などのゲーム対決です。チェスや将棋ではすでに人間を上回ったAIと人間との最終決戦が、囲碁AI(アルファ碁)と当時のトップ棋士、イ・セドルとの囲碁対決でした。
2016年に行われたこの最終決戦はAIが勝利したのですが、本番でアルファ碁を動かすため、1000台以上のAIコンピュータが稼働していました。対局は負けましたが、考えようによっては、イ棋士はたった一人で1000台以上のAI相手に、互角に闘った勝負だったとも言えます。ここに私たちが脳のリミッターを外し、限界を突破する鍵があります。
「ひらめき」とは何か
なぜ人間の脳はこれほど効率の良い仕組みなのでしょうか。脳にあってAIにないものを考えてみるとわかります。
結論から述べましょう。それは「感情」であり「美意識」です。
脳は感情のラベリングで、インプットされた情報を取捨分別する仕組みがあります。
もちろんこれを間違えると大事な情報を捨て去ってしまうことになりますが、正しく脳を使えば、膨大な情報の中から、本当に大事な情報にアクセスすることが、誰にもできますし、それを最高の形で「アウトプット」することも、誰にでもできます。
この「最高の形のアウトプット」こそが「ひらめき」であり「創造性」にほかならないわけですが、「感情」や「美意識」を意識することで、脳のリミッターを外し、限界を超えることが誰にでもできるのです。
本稿では、それがどういうものなのか、順を追って説明していきたいと思います。