「華々しい仕事」への期待が失望を招く

しかし、部下のほうは「プロジェクトを一緒にやろうと言われたのにこんなことをさせられて……」と不満が募るばかり。どんな話だったのかにもよりますし、いきなり新入社員がそんな華々しい仕事ができるはずもないでしょうが、「話が違う」という思いになるのも無理もありません。

ボタンの掛け違いがあるなら話し合いが必要ですし、目の前にやらなければいけないことがあるなら、部下のほうも考えを改めるしかないのかもしれません。

配属の話はさておき、個人にとっての仕事とはどんなものであるかを分けると、3つのカテゴリーがあり、「好きなこと」「できること」「やるべきこと」に分けられます。

仕事を選ぶとき、どんな観点で選んでいるでしょうか。

自分で仕事を選ぶ場合、「好きなこと」=「やりたいこと」が、「できること」と重なっていればやりがいにもつながりますし、なるべくなら両者が交わる部分が多いものを選ぶのがよいでしょう。

仕事なのですから「やるべきこと」という観点も忘れてはいけません。

上司であれば部下に仕事を割り振るときに、与えられたミッションにふさわしいのは誰か、部下一人ひとりの個性や適性を考えるでしょう。もちろん仕事ですから、成果を出せること、経験を積ませることを考慮して決めることになるでしょう。

「好き・できる・やるべき」の交点を探す

そうした判断をするには、日頃から部下と話す機会を持つ必要がありますし、部下が何を望んでいて、どんなことを得意としているのかリストアップしておくこと、あるいは部下本人と話し合って、すりあわせることが大事です。

オフィスで話をする2人のビジネスパーソン
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この3つは、アメリカの組織心理学の専門家であるマサチューセッツ工科大学のエドガー・シャインが提唱する理論の中で「3つの問い」と呼ばれます。仕事を選択する際に、最も大切にする価値観を「キャリアアンカー」と呼び、そのもとになるのがこれらの問いだというわけです。自分の好きなこと(WILL)、できること(CAN)、やるべきこと(MUST)はそれぞれどんなことか、というわけです。

この3つがたとえバラバラでも、どこか共通項を見出したり、あるいは近づけていくことが重要です。

私も仕事のお話をいただいたりすると、自分にとってどうかを考えます。そこで思うのは、自分がやりたいことというよりは、社会的にニーズがあって、提案をいただいたことが自分にできることであれば、求められたことをやるというのが正攻法なのではないかと考えます。

中には「好きなこと」でないとダメだというように、それを重要視する場合もあると思いますが、それでやっていけるなら、それに越したことはないと思うのですけれど、現実的にはそうはいかないこともあります。