受刑者のために心を砕く刑務官たち
工場担当というのは、受刑者処遇の中心を担う立場の刑務官だ。受刑者から「おやじ」と呼ばれることも多い。
「山本さんは、気づきはりましたか、2回目の面談時のあの石鹸の匂い。1回目の時、川端の体、えげつない臭いしてましたでしょ。せやから工場担当、山本さんが嫌な思いしたんやないかって、えらい心配しとったんです。『帰住先わざわざ探してくれはる方やのに、あの臭いで気分害されたんとちゃうか』って、そない言うてましたわ。ほんで結局、2回目の面談前は、工場担当自ら、風呂場まで連れて行って入浴させたっちゅうわけです」
現場刑務官は皆、受刑者の円滑な社会復帰を願っている。川端さんの件では、その一端を知ることができたようで、私自身、嬉しくも頼もしくも感じた。
救われなかった人たちが次々と塀の中へ
川端さんについてはひと安心したが、それは稀な例だと思う。高齢受刑者や障害のある受刑者のほとんどは、福祉のみならず、家族からも見放された存在となっているのである。
そもそも健常者もそうだが、罪を犯した者の過去を調べると、貧困や悲惨な家庭環境といった様々な悪条件が重なることによって、不幸にして犯罪に結びついているケースが多い。
そうした事実を踏まえれば、現在の刑務所の状況は、障害者のほうが健常者よりも、より困難な生活環境に置かれる可能性が高いという、日本社会の現実を表しているようなものではないだろうか。
福祉のセーフティーネットから零れ落ちた人たちが、次から次と、塀の中に入ってきている。そんな彼ら彼女らを、刑務官たちが世話をしているのだ。