私はよく「金持ちより心持ち」と申し上げるのですが、今後も医療技術の進歩はあっても、それには限度があって、人はどこかで諦めなければなりません。医者に期待しすぎなのです。テレビをつけるとイケメンでブラックジャックのような腕を持つ医者ばかりが出てきますが、実際にはそのような人はいません。私は医者との関わり方について、患者にアイドルグループのAKBならぬ、AKAだとお伝えしているんです。「(医者を)あてにしない、期待しない、諦める」です。

医者に期待するというのは、結婚を申し込むときに「君を絶対に幸せにする」と言いつのるようなもの。幸せになるかならないかはわからないのだから、妙に期待させるようなことは言ってはいけないのです。医療というものはそれぐらいのものだと考えておけばいいのです。医療技術に対して過度に期待すると心理的にドツボにはまってしまいますよ。

私が本気で仕事をする理由

立派な医者や医療施設を探すことより、病気にならない習慣や生活を確立してください。お金や技術では解決できない価値、例えば信仰、家族、コミュニティなど古来人類社会を支えてきた価値に戻ったほうが、統計的な観点からも元気で長生きしていることがわかってきています。

確かに今も長野県には封建的な風土が残っていますが、そこを否定的に捉えるのでなく、「人と人との確かなつながり」といった良い面を活かすように考え直してみませんか。

この具体的な例としてふさわしいかはわかりませんが、あるばあちゃんが、金曜日に私のもとへ来て血液検査をしたとします。特段、検査値に異常がなかったので、そのまま家にお送りしたとして、もしその翌日の土曜日の朝に死んでしまったら。

「イロヒラ医者は、絶対大丈夫と言ったのに翌日死んだ」という評判が村中にバーッと広がるのです。そして、その悪評がいつまで続くか。なんと200年間です。信じられないかもしれませんが、実際に村には「江戸時代に誤診を受けた」という言い伝えがまだ残っています。24世紀にもなって「色平哲郎はヤブ医者だった」なんて私は絶対言われたくない(笑)。だから、私は地域の農民の健康のことを本気で考えるしかないのです。