※本稿は、大野栄一『できるリーダーが「1人のとき」にやっていること マネジメントの結果は「部下と接する前」に決まっている』(日経BP)の一部を再編集したものです。
「昼間からビール」で部下を景気づけていた過去
「いいリーダー」の条件をあなたはご存じでしょうか。私自身、かつては「いいリーダー」について勘違いをして、「自分はリーダーにふさわしい」と過信していました。
離職率が8割にものぼる、金融商品、とくに商品先物取引の営業をしていた頃は、まさに「気合とど根性」が頼りでした。
パワハラとまではいかないものの、「コラ、やらんかい」と、体育会的な営業手法で部下を従わせたこともあります。景気づけと称して、昼間から部下とビールを飲むなど、今では考えられない方法で士気を高めていたのです。
まさに当時は、リーダーとして祝福的なあり方とはほど遠く、私のマネジメント成分はほとんどが「気合とど根性」「すすきのでのアルコール」でできていました。
支払いを済ませた私に、部下が一列に並んで、「あざーす!」と頭を下げる光景は、まるで軍隊のようでした。
部下は私の椅子(支店長という役職)に従っていただけなのに、私は「あいつらはオレについて来ている」と思い違いをしていたのです。
お酒を飲めば一時的な気分転換になりますが、根本的な信頼関係の構築にはつながっていませんでした。
優秀なリーダーであれば、部下が「仕事そのもの」にやりがいを感じ、イキイキと働ける環境をつくったでしょう。ですが私は、すすきので部下をイキイキさせて、それを翌日の仕事の励みにするという無理なサイクルをつくっていたのです。
優れたリーダーが共通して担っている役割
その後は、コンサルティング業界へ。IPO(新規公開株式)&資金調達コンサルティング会社でエグゼクティブコーチングを研究し、さらに「すごい会議」の大橋禅太郎氏との出会いによって、自分のマネジメントに対する考え方が根本から覆されました。
営業職時代の私は、「オレがリーダーだ」「オレが正しい」「オレの言う通りにすれば成果が出る」「オレについて来い」と自己中心的な考えに陥り、部下に対してまるで「オレオレ詐欺」を働いているかのようでした。強制的な手法や一方的な指示で部下を縛りつけ、彼らの自主性を奪っていたのです。
しかし、「すごい会議」の手法を学ぶ中で理解したのが、前述の、
「部下が自らのひらめきを大切に育める場をつくること」
「部下の人生をエキサイトメントにするような影響を与えること」
という、優れたリーダーが共通して担っている役割であり、
「何より幸運だったのは、あのリーダー(上司)に出会えたこと」
「ターニングポイントは、間違いなくあのリーダーのもとで働けたことです」
と部下が心からの感謝を抱く、「祝福的存在」としてのリーダーです。