睡眠中の人間の脳はどうなっているのか。筑波大学の櫻井武教授は「人間の脳は覚醒・ノンレム睡眠・レム睡眠という3つの作動モードを1日の間にスイッチングさせている。この中で長年謎だったレム睡眠の意味が近年、解明されつつある」という――。
※本稿は、櫻井武『睡眠と覚醒をあやつる脳のメカニズム〜快眠のためのヒント20〜』(扶桑社新書)の一部を再編集したものです。
レム睡眠とノンレム睡眠は「質」が違う
睡眠には「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」の2種類がある、ということは、すでに一般的な知識といっていいのかもしれない。しかし、この両者の違いを「ノンレム睡眠=深い眠り/レム睡眠=浅い眠り」と理解していないだろうか?
メディアなどで睡眠の基本を説明する際、よく使われる表現なので誤解するのも仕方がないが、それは誤りだ。
レム睡眠は浅い眠りではないし、そもそも、レム睡眠とノンレム睡眠の違いは、単なる「量」的なものではなく、「質」が違う。脳の状態も全身の状態もまったく異なる「別モード」だ。
睡眠中は3つのモードを繰り返している
睡眠の深さに関していうなら、深度の違いはノンレム睡眠の中にある。ノンレム睡眠は脳波の状態からさらに、「N1」「N2」「N3」に分類される。哺乳類の場合、「N1」≲「N2」≲「N3」とNの数字が大きくなるほど、睡眠深度が深いことを示す。
ノンレム睡眠中の「N1」とレム睡眠を比べると、レム睡眠中のほうがよほど覚醒しにくい。その現象だけをとっても、「ノンレム睡眠=深い眠り/レム睡眠=浅い眠り」ではないことがわかる。
ノンレム睡眠とレム睡眠の違いは、覚醒とノンレム睡眠が異なるのと同じレベルで違いがある。脳の活動という観点からいうと、私たちの体の状態は起きているか寝ているか――覚醒/睡眠の2つではなく、覚醒/ノンレム睡眠/レム睡眠という3つのモードに分かれていて、それを順番に繰り返していると考えたほうがよい。


