ネット・SNSが勝敗の行方を決めたとまでは言い難いが、些細なことが瞬く間に大きくなるその影響力はもはや誰も否定できまい。李氏は「支持する候補者に対してポジティブなことを言っても、関心を集められない。だからネガティブなことを探り出し、強調する動きが出た。今後、日本でも起きる問題。真偽の判別が難しいのに、選挙期間が今のように短くていいかどうか、議論が必要だ」と断じ、燦氏も「韓国の国民も、ネガティブな情報を頭から信じるのは危ないことを学習したと思う。SNSを使った選挙は成熟していないと危ない面がある。日本もこれからそれを学ぶだろう」と言う。

難しいのは、ネガキャンが嫌でも、まず規制ありきの発想では何のためのネット解禁かわからなくなることだ。

「候補者の規制は公選法の範囲で行えばいい。ところが、メール禁止のように有権者側にまで規制をかけようとしている。これは誤り。有権者は、『なぜダメなのか』と声を上げるべき。政治家の選挙運動と、有権者が行う政治的意思表示は別物だ。特定の候補者を落とそうと試みる落選運動は、組織的なら選挙違反だが、個人なら言論の自由の範囲内にある」(李氏)

本来、直接の参加者を増やし民主主義を健全に機能させるためのネット解禁。実態とかけ離れた規制の存在じたい、有権者の参加の拒絶に等しい。「ネットのネガティブな面に神経質に反応するよりは、相対的にどう利用すればいいかに関心を寄せる必要がある」という李氏のアドバイスを、我々は謙虚に聞く必要がありそうだ。

燦龍煥(チョウ・ヨンハン)
1962年、全羅北道出身。高麗大学経営学科卒業。S-OiL勤務を経て麗水世界博覧会広報室長。現在、SNSサポータス研究所所長、政策広報コミュニケーション研究院院長など。
李洪千(リー・ホンチュン)
1968年、馬山市出身。漢陽大学数学科卒業。盧武鉉民主党大統領候補の演説・メディア担当秘書等を経て2008年、慶應義塾大学政策メディア研究科博士課程修了。研究課題はネット選挙、マスメディアと政治との関係。
(姜京姫=通訳)
【関連記事】
公職選挙法 -ネットに書いてはいけない選挙のこと
「ネット選挙解禁」先送りで日本が失うもの
『ウェブで政治を動かす!』
アベノミクスよりすごい景気対策がある
地方公立小学校でも日本の20年先をいく!? 韓国の熱い、熱い、英語教育熱