「噛み癖」は遊びで解決
お母さんは理解がある方で、「さびしかったんだね」とやさしく声をかけてあげていました。それでも、教室に通われて3カ月ほどした頃には噛み癖はなくなり、「お母さん、爪切って」と言えるほどに爪が伸びてきました。
指しゃぶりや爪噛みは癖ではあるのですが、普段は噛み癖がない子でも、不安や緊張を強いられる状況になると、爪を噛むことがあります。どういうことかというと、おそらく不安や緊張によってモロー反射が誘発されやすい状況になると、ほかの反射も出やすくなるためです。
いずれにしても、口まわりを刺激したり、動かしたりする運動が効果的です。ストローを吹いたり、口笛を吹いたり、口まわりを動かす体操をしてみるのもいいでしょう。子どもが嫌がらないように、遊びの要素を取り入れてみましょう。
「乗り物酔い」も反射が関係している
乗り物酔いの原因は、三半規管で感じる体の平衡感覚と実際の体の状態にズレが生じていることが考えられます。脳の中で調整しきれずに自律神経が不安定になることから「酔い」という症状が出やすくなります。乗り物酔いにかかわっているのがTLR(緊張性迷路反射)とモロー反射です。おまけに感覚過敏があると、においにも敏感です。よく車のにおいが苦手で余計に気持ちが悪くなる、という子どもの声も聞きます。
子どもの頃は乗り物酔いがひどかったのに、大人になるとあまり酔わなくなるのは、成長につれて原始反射が統合することが多いからでしょう。TLRとモロー反射が残存しているといろいろな動きに鋭敏になってしまうため、少し揺れただけでも吐いてしまったり、怖いと感じてしまったりします。
また、マット運動の前転や鉄棒の前回りや逆上がりなどの回転する運動が苦手、あるいは遊園地のコーヒーカップなど回る動きをすると気持ちが悪くなる子も、その背景に平衡感覚の過敏さがあると考えられます。
お母さん、お父さんが子どもの頃、公園にくるくる回る球形の遊具があったのではないでしょうか。目が回るまで遊んだりしたものです。コーヒーカップもそうですが、このような目が回る遊びはTLRやモロー反射をとるのにもうってつけでした。
しかし、最近では危険だという理由から、公園から遊具が撤去されることが多く、子どもたちが“目が回る経験”をすることが少なくなってしまいました。回る経験が減ってしまえば、原始反射だけが残ってしまうのです。