「鉛筆を嚙む」のも反射が関係している

本書でお伝えしたように、探索たんさく反射(赤ちゃんの口元を指でやさしくつつくと、おっぱいをさがすような動きをする反射)や吸啜きゅうてつ反射(ママの乳首など、口に入ってきたものを強く吸う反射)が残っていると、口元に触れたものを噛んでしまうため、指しゃぶり、マスクを噛むなどの行動につながります。逆にマスクをすることそのものを嫌がる子も、探索反射、吸啜反射が残っている可能性が高いでしょう。

探索反射が残っていると、口元に何か触れると口が開いてしまったり、噛んでしまったりします。新型コロナウイルス感染症の流行によって、小さい子どもでもマスクを着用していることが増えましたが、なかにはマスクによだれがつくほど噛んでいる、と困っている親御さんもいます。

洋服のえりやタオルを噛む子、小学生のケースでは、鉛筆を噛んだり、鍵盤ハーモニカの口をつぶしてしまうほど噛む子もいます。刺激を求めて、口まわりをずっとペロペロなめている子どももいます。ずっとなめているので、唇のまわりがいつも荒れていました。その子はなかなか発語がありませんでした。探索反射や吸啜反射は口まわりの筋肉ともかかわりがあり、反射が残っていると、発語にも影響を与えてしまうのです。

噛み跡のついた鉛筆
写真=iStock.com/Picsfive
※写真はイメージです

「母乳だから」「ミルクだから」というわけでもない

指しゃぶりや爪を噛む癖も同様です。アメリカでは、母乳を早めに切り上げられた子に、探索反射が残ることが多いともいわれています。「うちは完全母乳で2歳になっても飲ませていたから大丈夫」などと言うお母さんもいますが、一概にそうとはいえません。

たとえば母乳の出がとてもよかったお母さんの場合、赤ちゃんからすると簡単に母乳が出てしまうので、探索反射や吸啜反射を使い切ることができず、反射が残るのではないかと考えられるのです。

ミルク育児をされていた場合、ミルクの出がいい哺乳瓶を使って飲ませた場合も同様に、反射が残る可能性もあります。最近では、あえてミルクが出にくいように工夫されている哺乳瓶の乳首もあるので、原始反射に関しては、一概にミルク育児はダメで母乳育児はOK、というわけではないのです。

なお、爪を噛む癖のある子どもの場合、モロー反射の感覚過敏であったり、ストレスが関係している場合もあります。私(松本)が運営する、児童発達支援・放課後等デイサービスの運動教室のLUMOに通われていた5歳児で爪噛みがひどく、爪も切れないほど短くなってしまっている子がいました。その子はモロー反射が残っていて不安が強く、幼稚園のお泊まり会でもずっと爪を噛んでいたそうです。