なぜいじめはなくならないのか。児童精神科医・佐々木正美さんは「友達をいじめる子というのは、うんと小さいときに親と喜びを分かち合うことがなかった、あるいはとても少なかったケースがほとんどだ」という。著書『子育てのきほん 新装版』(ポプラ社)より、一部を紹介する――。(第1回/全2回)
母親に抱きしめられている少女
写真=iStock.com/maruco
※写真はイメージです

「子どもが喜ぶことだけをしてあげる」重要性

お母さんがたに「赤ちゃんをどう育てればいいのでしょう」「なにをしてあげれば一番いいのでしょう」ときかれるとき、私はいつもこう答えています。

「お母さんは、子どもが喜ぶことをしてあげてください」

単純なことだと思いませんか? けれど、多くのお母さんは「喜ぶことばかりをしてはいけないのではないか」というふうにお考えになるようです。

けれどそれは違います。「子どもの喜ぶことをしてあげること」とは、その子がやがて社会のなかで生きていくうえで一番必要な「社会性」の土台をつくることだからです。

私は保健所などで行う乳幼児健診でお母さんがたの相談に乗ったり、またこれから赤ちゃんが生まれてくる妊婦さんたちにお話をする機会がたくさんありました。

精神科の医師として、生まれたばかりの赤ちゃんになにをしてあげればいいのか、どう接すればいいのかをいろいろとお話ししてきたのです。

ずっと言いつづけてきたのが「子どもの喜ぶことをしてあげましょう」ということでした。

こうした勉強会で出会ったお母さん、保健師さんのなかには、その後10年以上おつきあいがつづいた方もたくさんおられます。当時妊婦さんだった方のお子さんが小学校高学年になっても、勉強会に参加されてずっとお母さんとお子さんを見てきたケースもあります。