孤絶状態になる前に救い上げる方法

孤立出産は「妊娠を誰にも知られたくなかったから(孤立出産をした)」という言葉で説明のつく状態ではない。

出産という究極の恐怖シーンの淵に一人で立つ女性は、この最終地点に傾れ込むまでのプロセスで、親、家族、友人、職場、すべての関係性から孤絶し、深い溝に落ち込んでいる。

もし、それらの遠因となった境界知能や神経発達症の特性への理解が社会で共有されていれば、彼女たちは溝に転げ落ちるより早い時点でいくつものセーフティネットによって守られていたのではないか。

高松市の事件は、3回の孤立出産遺棄という特殊さに加えて、もうひとつ、解明が待たれる点がある。

孤立出産嬰児殺害遺棄事件のほとんどは出産直後に母親が殺害している。

たとえば、今年1月、24歳の女性が宮城県塩竈市の自宅で出産した赤ちゃんを雪の中に埋めて殺害した事件。報道によると、女性は取り調べに対し「雪の中に隠したのは間違いないが、当時はパニックになってそこまで考えられなかった」と殺意を否認したという(その後、仙台地検が不起訴処分)。

この女性のように、孤立出産直後に殺害した女性が「パニック」という言葉で自らの行動を説明することは少なくない。

なぜ女性は赤ちゃんの命を奪ったのか

ところが、本件の被告女性は2020年4月中旬ごろに2回目の孤立出産をし、その後、4月下旬ごろまで赤ちゃんと過ごしていた。産後から10日間ほどといえば、産褥期の女性の身体は疲れ切っていただろう。

その間、一人で赤ちゃんのお世話をしたであろう女性は、赤ちゃんの鼻と口を覆って呼吸困難にさせ、殺害した(読売新聞2024年12月28日)。

赤ちゃんを殺したのはなぜだったのか。そもそも女性が3回の孤立出産をしたのはなぜだったのか。遺体を押し入れに隠し続けなければならなかったのはなぜだったのか。

興野氏は2月18日、蓮田氏は2月19日に弁護側参考人として高松地裁で証言する。

裁判で明らかになる事実は後編で詳報する。

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