「工事を完成させよ」の大号令
公式な統計はないものの、中国における未完成マンションは2000万戸に上るとも推計されている。未完成物件のために住宅ローンの支払いをするのは嫌だと、2022年には支払い拒否ブームまで起きる騒ぎとなった。また、ランウェイロウになるというリスクは住宅の買い控えにつながる。
こうした混乱を受け、中国政府は未完成物件の工事を再開するよう、大号令を下した。放置しておけば大きな経済損失を受ける人民が続出し、社会不安につながりかねない。それを防止しようというわけだ。住民を救うという意味でこの政策は「正しい」。だが、その「正しい」対策がめぐりめぐって、野ざらしにされていたマンションの工事再開につながり、住宅在庫を爆増させている。
ただ、未完成マンションの工事を再開しても、新たに欲しがる人がいるのだろうか。たとえば高銀金融117近隣のマンションは路線バスも少なく、近所にはスーパーもない陸の孤島に立地する。購入者にとっては未完成のままよりは完成してもらったほうがいいに決まっているが、今さら完成するぐらいならお金を返して欲しいというのが本音だろう。そもそも、この不便な場所にマンションを買った人々は自分が住むためというよりも、投資目的で値上がりを期待していたのだから。
未完成建築が完売している物件ならばいいが、今の不動産不況では売れ残りがある物件が多い。完成すればするだけ住宅在庫が増えてしまう。作りかけの住宅の建設を中止する。その物件のオーナーには金銭で補償するか、同じ価値の別のマンションを提供するという、思い切った策が必要なのではないか。
現在の「未完成物件を完成させよ!」という「正しい」政策が、不動産不況の終わりを見えなくしているわけだ。