会見では『失敗の本質』への言及があったが…
新しく社長に就いた清水賢治氏は、今回の会見で、『失敗の本質』に言及した。
先日亡くなった経営学者の野中郁次郎氏らが、太平洋戦争における、ノモンハン事件、ミッドウェー海戦、ガタルカナル作戦、インパール作戦、レイテ海戦、沖縄戦、の6つの事例を分析し、日本軍の失敗パターンを挙げた名著である。
同書で言う「成功体験への固執」は、今回の記者会見で、フジテレビの遠藤龍之介副会長が述べた反省に通じる。また、「幹部の無能」が「現場のがんばり」に押し付けられる。その弊害が、同書では指摘されている。
実際、嘉納会長は、「私の力不足のために、みんなに迷惑をかけて申し訳ない」と謝罪している。日枝氏を含めた上層部を一掃すれば、「企業風土」が一変し、「現場のがんばり」で同社が復活するかのような期待を抱きかねない。
けれども、この期待は幻想に過ぎないのではないか。
現場こそが「問題」
「事件は会議室で起きてるんじゃない。現場で起きてるんだ」
フジテレビが生み出したヒットシリーズ「踊る大捜査線」の映画第一作『踊る大捜査線 THE MOVIE』(1998年)で、主人公の青島俊作(織田裕二)が、警視庁の幹部たちに投げつけたセリフである。
今回の事件もまた、会議室ではなく、現場で起きたものであり、そこには、日枝氏はもちろん、記者会見に臨んだ首脳陣もいなかった。
「中居正広氏と女性とのトラブル」の中身がどうだったのか、でもなく、「日枝氏の責任」でもなく、フジテレビの現場に流れ、その「礎」(フジ・メディア・ホールディングス社長の金光修氏の表現)となっている「企業風土」は、どんなものだったのか。
それは、私の知る限り、金銭面にも容姿にも恵まれた、つまりは、あらゆる点で裕福な人たちの集まりである。ちょっと斜に構えた風なことを言いたがるところも含めて、私にとっては、愛すべき人たちである。
そんな人たちを、そして、そんな人たちがつくるテレビ番組を、受け入れられるかどうか。「現場」が問われている。