定額と定率のいいとこどりをする具体策
同時に気をつけたいポイントは、資産運用の悪化です。要するに、運用成績によって元手となる資産が下がってしまったときのこと。そうなれば、定額であれ定率であれ、資産の取り崩しは難しくなります。
日興リサーチセンターの資産運用研究所主任研究員・本山真氏のレビュー(「投資信託の取り崩し方法の比較」2020年5月)によると、過去30年の日経平均に連動する投資信託を買った場合、定率で取り崩せば、毎月の取り崩し額と最終的な残高は、定額よりも残るけれど、パフォーマンスの良いときと悪いときで入る差額が大きい。つまり取り崩し額が不安定になるデメリットを指摘しています。
そこで私からの提案は、NISA口座とは別にもう一つ投資用の口座をつくり、2つの口座を運用することです。NISA口座は非課税のため、値上がりが期待できる株式や成長型投資信託の運用。新しい口座(特定口座もしくは一般口座)は、配当収入や価格変動が少ない資産(債券や高配当株式など)を運用する。ただし後者は、利益の20%が課税されるため、ひんぱんに売買せずに長期保有で税効率を高めることが必要です。
非課税口座と課税口座の取り崩しテクニック
取り崩しの優先順位は次のようにすると、税負担が抑えられます。
① 非課税口座(NISA)の利用
利益に課税されないため、まずNISA口座の資産を活用。
② 課税口座の低リスク資産の取り崩し
値動きの少ない資産を優先して売却。
③ 課税口座の高リスク資産の取り崩し
値動きの大きい資産はタイミングを見て売却。
「わざわざ別の口座をつくるのが面倒」という人もいらっしゃるでしょう。もちろん1つの口座内で分散投資を徹底させても問題はありませんが、口座を分けると取り崩すときにわかりやすい。“取り崩し用のスペア口座”があれば、安心感がさらに増すのではないでしょうか。
ですから、50代以降の口座づくりは計4つ。冒頭で述べた年上の方にも御納得いただいた次第です。