その最たるものが、シャープの第一工場建設を後押しするかのように、02年に国会を通過させ、経産省内でも“シャープ税制”と揶揄された特別税制だ。

たとえば、特例として工場建設の費用を「一括減価償却」として計上することを認めた。これは同額の補助金を出すのに等しく、同省内で「露骨すぎる」と批判の声が上がった。

ところが、当時の豊田正和商務情報政策局局長は、「国内の雇用をどうやって守るのか。日本の技術をどうやって守るのか」とそれらを一蹴した。

しかし今、経産省はそうした過去の失敗を糊塗するかのように、シャープの“救済”に動いている。

その根回しは、経産省幹部たちが、自民党が再び政権に復帰することを見越した昨年の安倍政権誕生前から始まっていた。大胆な金融緩和とともに、「日本の製造業復活」を掲げる安倍晋三政権は、“シャープ救済”をその象徴とする腹積もりである。

それは、経産省幹部――後に安倍政権の中枢に入る今井尚哉資源エネルギー庁次長(当時、現政務秘書官)、柳瀬唯夫経済産業政策局審議官(当時、現事務秘書官)が、安倍自民党総裁(当時、現首相)だけでなく自民党の茂木敏充氏(現経産相)、安倍の側近である甘利明政調会長(当時、現経済財政政策担当大臣)といった現政権の中枢に繰り返し説明を行い、“刷り込んで”いった結果と考えられる。

そして、その救済の“ウルトラC”が、昨年12月31日付、日経新聞の一面に大々的に掲載された「産業競争力強化法」(仮称)である。その要諦は、「民間リース会社と共同出資で官民共同会社の特別目的会社をつくり、製造業者が維持費、固定費に苦しんでいる工場や設備を買い入れる」もので、その但し書きには何と「“半導体、液晶パネル”を作る企業」と書かれているのだ。

さすがに経産省内部からも「これではまるで徳政令だ」と、再び批判の声が上がっている。省内の反対が根強いこの“ウルトラC”も今国会には提出されず、結局は絵に描いた餅で終わりそうだ。

「亀山モデル」は頓挫し、約3000人の社員が会社を去った。最新鋭の設備を誇る堺ディスプレイ工場(SDP)は、ホンハイ精密工業の出資である。10年間、経産省に翻弄され続けたシャープ再生の道筋は杳(よう)としてみえず、混迷は深まるばかりだ。