それでも軍事援助を継続するワケ
一方で、親ロシアと見られているトランプ次期大統領は、ロシアにウクライナ領土の20%を取らせても、残り80%は渡すわけにはいかない。
ウクライナのロシアに対する完全敗北は、トランプ氏のモットーである「力による平和(Peace through StrengthあるいはSpeak Softly and Carry a Big Stick)」に反するからだ。
そのため、トランプ次期大統領は選挙中の公約を修正し、1月20日の就任後も対ウクライナ軍事援助を継続する方針だと、英フィナンシャル・タイムズ紙が12月20日に報じた。
これは、和平交渉に決定的な影響をもたらすだろう。
休戦後に米国が狙うウクライナ資源
同時に、トランプ次期政権はウクライナから、バイデン政権が求めなかった「ウクライナ産の重要鉱物による武器代金の支払い」を要求する方針だと、トランプ氏の盟友である共和党のリンゼー・グレアム上院議員や米保守派論客のマーク・ティーセン氏が明らかにした。
これにより米有権者に対して、対ウクライナ軍事継続支援をしばらくは継続させる名分が立つ。
ウクライナ全土に眠る鉱床の価値は総計11兆5000億ドル(約1815兆円)にも上ると推計されている。グレアム上院議員は、「ウクライナ人は金鉱の上で暮らしており、その鉱脈はロシアや中国には絶対渡せない」と断言している。
たとえば、半導体製造のレーザー光源となるネオンの大半はウクライナ産であるし、電気自動車(EV)バッテリー製造向けのリチウムやニッケル、さらに人工知能ブームで急増するAIデータセンターの電力需要を満たす原子力発電に必須のウランなど、ウクライナの重要鉱物資源(レアメタル)は米テック大手や製造業にとり垂涎の的だ。