こうして米国は中国に勝利する
トランプ氏の「ディール」によって、ウクライナのウランは米AIデータセンターや暗号通貨マイニング、米国に回帰する製造業などで急伸する電力需要に対応する次世代型小型モジュール原子炉(SMR)で使われる未来が構想されている。
また、同国のリチウムやニッケルはトランプ氏が頼りにする実業家イーロン・マスク氏が経営する米EV大手テスラのバッテリー製造を支え、ウクライナのネオンが米半導体の製造コストを下げるという構図だ。
こうして、トランプ次期政権が推進するテクノロジー分野のイノベーションをウクライナの資源が盛り立て、ウクライナから得られる鉄鉱石、チタン、マンガン、アルミ、コバルトで製造業がさらに米国に回帰して「米国が再び偉大になる」。
そして、米国産業のルネッサンスがそのまま、中国に対する米国の技術的な優位と国力の差になって具現化するという算段である。
「トランプ和平」で米国が偉大に?
③米陸軍退役中将の「戦後構想」
和平交渉をまとめる担当特使に指名されたケロッグ米陸軍退役中将の「戦後構想」では、ウクライナが強い立場でロシアとの交渉に臨むことが明記されている。
つまり、米国がウクライナの重要鉱物資源と引き換えに同国への兵器供与を続行し、ロシアに対しては経済制裁の継続や拡大をちらつかせることで、強気を装うプーチン大統領を休戦交渉のテーブルにつかせる。
直近ではバイデン政権が、ロシアに流入する外貨の半分強を稼ぎ出す金融機関のガスプロムバンクに対して制裁を決定し、ロシア通貨のルーブルが急落してインフレが加速している。こうした制裁の強化あるいは解除はトランプ次期大統領にとり、交渉をさらに有利に進める切り札となり得る。