トランプ氏も対ウクライナ軍事援助を継続
②ウクライナ鉱物資源の価値と重要性
一方のトランプ次期大統領の和平仲介を動機付けるのは、ロシアとウクライナの停戦を調停することにより米国が経済的利益を享受し、さらに紛争解決能力のある大国として米国の地位や栄光を高める構想だ。
ロシアが2022年2月に侵攻を開始して以来、米国は1830億ドル(約28兆8682億円)という巨額な予算をウクライナに対する軍事・経済援助に費やしてきた。
2024年12月30日にはバイデン政権が政権移譲を目前に控えて、高機動ロケット砲システムの「ハイマース」や防空用の弾薬を含む米軍兵器の備蓄から12億5000万ドル相当、さらに防衛企業やパートナーから装備品を調達する「ウクライナ安全保障支援イニシアティブ(USAI)」から12億2000万ドル相当、合計およそ25億ドル(約3925億円)分の追加支援を行うことを発表した。
「早期終戦」が「失地回復」を上回った
しかし、パンデミック以降の累積インフレで米国民の多くが「生活がとても苦しくなった」と感じる中、そのような支出の継続は正当化しにくくなっている。
トランプ氏が「ロシアとの停戦に応じなければウクライナ向けの軍事支援をカットする」と主張して2024年11月の大統領選挙で返り咲きを果たしたのも、そのような有権者の意向の表れだ。
米世論調査大手のギャラップによれば、2022年の侵攻開始当初は米国民全体で「ウクライナの失地回復を支援すべき」との回答が65%と過半数を大きく上回り、「早期の終戦が必要」は30%ほどに過ぎなかった。
ところが、2024年12月には「早期の終戦が必要」の割合が50%、「ウクライナの失地回復を支援」が48%と初めて逆転し、国内問題で疲弊した米国民がトランプ次期大統領の提言する停戦に傾いていることが明確に示されたのである。