NVIDIA創業者兼CEOのフアン氏が語ったこと
CES2025開幕直前の1月6日の夜、NVIDIAの創業者兼CEOのジェンスン・フアン氏が基調講演を行い、大きな話題を呼んだ。その場で発表されたのは、AIプロセッサ「Blackwell」の量産開始、デスクトップ用AIスーパーコンピューター「Project DIGITS」や自律走行車やロボティクス開発を支援する物理AIプラットフォーム「NVIDIA Cosmos」などの新商品だ。これらは、NVIDIAが多岐にわたる分野で最先端テクノロジーを牽引していることを改めて示すものだった。
もちろんNVIDIAも、AIエージェントをAI進化の中核に位置付ける。同氏は、AIエージェントは「数兆ドルの機会」であり、「AIエージェントの時代が到来した」と述べた。フアン氏の基調講演で発表された「Agentic AI Blueprints」は、企業がカスタマイズされたAIエージェントを迅速に構築・展開し、業務の自動化と効率化を実現するための包括的な開発フレームワークだ。これは、推論や計画、行動を自律的に行う「知識ロボット」としてのAIエージェントを支え、複雑なデータ処理や意思決定を可能にする。
ここで特に興味深かったのは、フアン氏が語った「3つのスケーリング法則」である。これはAIの性能を進化させる基盤であり、フアン氏はこれを3つの段階に分けて解説した。
第一に、「事前トレーニング・スケーリング(Pre-Training Scaling)」だ。AIの性能向上は、トレーニングデータの量、モデルの規模、そして計算能力の増加によって実現される。この法則に基づき、データが増えるほどAIはより高度な能力を発揮する。現在、インターネット上で生成されるデータ量は年々倍増しており、近い将来、人類史上これまでに生成されたデータ総量を凌駕する見通しだ。
第二に、「事後トレーニング・スケーリング(Post-Training Scaling)」だ。ここでは、強化学習や人からのフィードバックによってAIのスキルが洗練され、特定の分野での性能が向上する。AIは生成した回答に対してフィードバックを受け取り、反復的に課題を解決することで、自らの能力を高めていく。このプロセスは、人が教育や訓練を通じて成長する過程に似ている。
第三に、「テスト・タイム・スケーリング(Test-Time Scaling)」が紹介された。これはAIが実運用で発揮する能力に関するもので、複雑な課題に取り組む際に計算リソースを動的に配分する。単なる一回限りの推論ではなく、問題をステップ毎に分解して考える「推論」や、複数の解決策を生成・評価する能力が含まれる。これにより、AIは柔軟で適応力の高いシステムとして機能する。