自律的に行動するAIエージェント

中でも、筆者が特に注目したのがAIエージェントだ。これは、人間の介入を必要とせず、みずから目標や環境を理解し、タスクを計画・実行できる高度な自律型AIである。予測AIが需要予測を、生成AIがオリジナルなテキストや画像の生成を担ってきた中、AIエージェントはその先を行く存在だ。

旅行手配を例にとろう。従来の生成AIは、目的地や交通手段といった旅行プランを提案するなど旅程を計画するのが精一杯。しかし、AIエージェントはその先へと踏み込み、ホテルやフライトの予約、支払いまでを「代理人」として自動でやってくれる。ユーザーは結果を待つだけでよく、従来の手間が完全に排除される。

実際、この分野には、すでに多くの主要企業が参入している。マイクロソフトの「Copilot Studio」は、顧客が自律型エージェントを自由に作成できる環境を提供。カナダのスタートアップ企業Chatbaseも、AIエージェントの構築プラットフォームを提供する。

CES2025の様子
出典=筆者がCES2025において撮影
 

アマゾンは買い物アシスタントとしてAIエージェント「Rufus」の日本導入を準備中だ。アップルもスマホ上でアプリの操作や情報収集を学習するアシスタント機能を強化している。OpenAIは今年1月に研究者向けプレビューとしてAIエージェントを公開予定で、競合のAnthropicはすでにウェブ検索からデータ入力、さらにはコンピュータ画面の自律操作までを実現する「Claude」を導入している。グーグルやセールスフォースなどもAIエージェントの開発・運用を進めている。

日本勢も負けてはいない。富士通の「Fujitsu Kozuchi AI Agent」は、会議エージェントとしてAIが自ら会議に参加して情報共有したり施策を提案したりするだけでなく、製造や物流の現場ではカメラ映像を分析して改善提案をしたり作業レポートを作成したりする現場支援エージェントとしても活躍する。これらのソリューションは、人とAIが協調することで業務効率を飛躍的に向上させる新たな可能性を示している。

まさに、AIエージェントは、私たちのくらしや働き方を大きく変える可能性を持つテクノロジーなのだ。