「1年間やることができたので、もう満足」
「普通はシーズン後に監督から呼ばれて引退を告げられます。でも、僕の場合は膝を1年間怪我して、その後復帰して1年間やることができたので、もう満足ということもあり、2021年の都市対抗が終わったタイミングで、自分から辞めますと言いにいきました。選手兼任コーチで残ってくれないかというお話もいただいたのですが、僕自身、起業したいという夢があったので、野球はここでキッパリ辞めようと思いました」
引退後、いったんは東邦ガスに残り、社業を学ぶ道を選んだ。部署は営業部から、ガス管工事の設計、見積もりを手配したり、施工を管理したりする設備部に異動となった。
「専門用語が飛び交ったり、圧力計算とか色々あったりして、すぐに覚えるのはすごく大変でした。研修期間もほとんどなく、先輩社員に帯同しながら勉強していく感じでした」
営業では一定の成果を出すことができた自分が、土木や理系の知識が問われる設備管理では、戦力になれないもどかしさを感じていた。ただ、独立準備として、ボランティアで興した野球塾に人が集まり、経営化することにメドが立ったため、2023年5月に退職後すぐに起業した。
野球以外に、何がやりたいかわからない
「東邦ガスという安定企業を辞めることを相談すれば、間違いなく止められるだろうなと思っていたので、親も含め誰にも言っていません。親はあきれていましたけど、1回やってみないと気が済まないタイプなので、そこは思い切りました」
代表を務める「Ring Match」では、野球塾の他に、野球経験者に特化したキャリア支援サービスを行っている。そこには、それぞれにふさわしい「リング(土俵)」で、人材と企業をマッチングさせたいという思いが込められている。
「僕もそうでしたが、野球を辞めた後のキャリアに困っている人が多いんです。野球しか経験していないので、自分が何をやりたいのかわからず、野球以外の人脈や接点も少なく、選択肢が非常に少ないです」
「社会人野球は、野球がやりたくてその会社を選んでいる場合がほとんどです。そういった方が、野球を辞めた時、ずっとこの会社でいいのだろうかというのは絶対にあると思います。私も営業部から設備部に行き、適材適所があるなということをすごい感じました。野球をやっている人の良さというのは僕が一番知っていると思うので、そこを活かせられたらと思っています」