検査せずに治療薬を処方することは可能

「教員の訓練のために学校で統計を取っているから、インフルエンザA型かB型かがわからないと困る」というクレームを受けたこともありますが、「教育材料として個人情報を集計するためには、然るべき学術機関で倫理審査を受けないとならない。受けましたか?」と注意しています。

したがって、発熱直後で抗原検査をやむを得ず行ったが陰性だったとしても、発熱やぐったり感、関節痛などで総合的にインフルエンザが否定できなければ、インフルエンザの治療薬を処方することも可能です。

インフルエンザ流行期においては、検査を行わずともインフルエンザと「みなし診断」を行って、治療薬を処方することも可能なのです。冬場の混雑している外来で、検査を受けて結果がでるまでの10~15分を待たせるのがつらい場合などに、保護者の方々と相談の上でインフルエンザ治療薬を処方することがありますが、これは決していい加減な治療ではないのです。

処方された薬
写真=iStock.com/Ca-ssis
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受験生にインフルの疑いがあったら…

受験が差し迫っている時期に、子どもが1時間前から発熱し、関節痛も出てぐったりしてしまった――。こういった状態で受診されたケースを何例も経験しています。このような場合にはどうすべきか、試験日時などを聞いて、なんとか最適解を導こうと頭をひねって来ました。

インフルエンザであれば、発熱日から5日間は自宅療養が必要です。受験日までに5日以上あれば、なるべく早めにインフルエンザ治療薬を処方したほうがいいので、「みなし診断」としてインフルエンザ治療薬を処方し、自宅で身体を休めてもらうようにお伝えしたことがあります。

一方で、試験までに5日間なければ、検査できる時間まで待ち、再来院してもらって検査をすることにしています。この場合に、他の感染による発熱でないことを確認するために、溶連菌などの検査を行ったりもしました。こういう場面において、血液検査は参考になりません。炎症値を確認できても、即時で病原体まで同定できる検査は血液検査にはないからです。

これらの「みなし診断」も含め、医療には厳格な「正解」「不正解」は存在しません。その時の家族の状況や事情なども含めて総合的に判断して、診察、検査、処方などを行っているのが医療現場です。

受診したときには、その時に直面している事情について、お医者さんに相談してみてください。週末で翌日に医療機関が開いていないといった場合、医療者はその時点での最善の策を考えてくれるはずです。

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