「日本ファクトチェックセンター」の不可解な記事
プラットフォーム上に真偽不明の情報がはびこる状況では、それが事実かを調査する「ファクトチェック」の取り組みが貴重だ。
ファクトチェックとは、一言でいうと「世間で事実であるかのように言われていることが、本当に事実かどうかを確かめること」だ。国際ファクトチェック団体のIFCNは、加盟団体に「中立性」「公平性」「情報源をできるかぎり明らかにする」「資金調達と組織の透明性」「ファクトチェック手法の公開と一貫性」「ミスがあった場合に誠実に訂正する」ことなどを求めている。
日本にもIFCN加盟団体が3つあり、なかでも最も頻繁に記事配信をしているのが「日本ファクトチェックセンター(JFC)」だ。運営委員長は京都大学教授で憲法学者の曽我部真裕氏が務めており、編集長は朝日新聞記者、バズフィード編集長やGoogle News Labティーチングフェローなどを歴任し、業界のオピニオンリーダーとしてテレビにも多数出演している古田大輔氏だ。
こうしたファクトチェック団体の存在は、大いに歓迎すべきだ。しかし、今回の兵庫県知事選について、JFCが出した記事は、国際的なファクトチェック記事や、IFCNの倫理基準と照らし合わせてみれば、疑問を感じざるを得ない点がいくつもあった。
「パワハラの定義にあてはまる行動」としているが…
それでは、JFCが配信した兵庫県知事選に関する記事の問題点を具体的に見ていこう。
まず、斎藤知事のパワハラ問題を扱ったこの記事では、次のような結論を出している。
兵庫県議会の不信任決議で失職した斎藤前知事はパワハラはしていないといった言説が拡散したが、根拠不明。県職員へのアンケートでは実際に目撃などで知っている人が140件、間接的に聞いて知っているという回答も含めると回答の4割を超える。本人も「厳しい叱責」「机を叩いた」ことなどを認めており、「必要な指導だと思っていた」と述べているが、パワハラの定義にあてはまる行動だ。
県職員のアンケートや百条委員会の証言などで告発された以上、「パワハラはしていない」と決めつける言説が根拠不明だというところまでは妥当だろう。しかし、斎藤氏の行為が「パワハラの定義にあてはまる行動」だったという点については疑問が残る。