「ハッキリしたターゲット像」を作れる

「みんな」「誰でも」のように不特定多数の消費者をターゲットにするマス戦略に対して、マスよりも小さな「こういう人たち」という特定の共通項を持つ一定規模の消費者グループをターゲットにするのがスモールマス戦略の特徴だ。マス戦略が解像度の低いぼやけたターゲットになりやすいのに対して、消費者グループを具体化するスモールマス戦略は、解像度の高いハッキリしたターゲット像を作ることで、より効果的に成果をあげることが期待できる。

餃子の王将の場合、「みんな」のマスに向けた標準的でよくある中華料理店になるのではなく、店舗それぞれの周辺エリアに生活する具体的なグループの消費者像のスモールマスに向けた店になることで、他にはない魅力を備えることができるようになる。つまり、地域ごとのスモールマスのニーズに合わせた商品・サービスを提供することによって、スモールマスが喜んで選びたくなる店づくりを実現しているのだ。

横断歩道を渡る人々
写真=iStock.com/bee32
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店舗に権限を与え、独自性を出せるように

餃子の王将のスモールマス戦略を成立させているのが、店舗それぞれの独自性だ。各店舗の店長には、オリジナルメニューやイベント・サービスの開発、価格設定、バイトの時給、営業時間の設定など、じつに様々な権限が与えられているという(※3)。現場発の店づくりをできる環境が整えられているのだ。

※3 マネーポストWEB「『王将フードサービス』は何が凄い? 成長を支える3つの特徴」、TBS「『餃子の王将』がいまだ成長を続けるヒミツ」を参照。

そのため、店舗が立地する地域のスモールマスの好みに応じたメニュー開発や、サービス提供も可能だ。店が学生街にあれば、お得でボリュームのある学割サービスを充実させられるし、お年寄りの多い地域ならば、シルバー割引を充実できる。仕事終わりに立ち寄る客層が多ければ、「ちょい呑み」や「せんべろ」のメニューを用意してもいい。

実際、一部の店舗では、食べ放題・飲み放題のコースが用意されている。また、愛知の稲沢店では、サラダバーのほか、本格タイ料理をメニューに加えている。京都の宝ヶ池店は、餃子の王将の全店中、最もメニュー数の多い店として有名で、80種類におよぶ商品が用意され、炙りチーズ餃子、餃子入り茶碗蒸し、京風白味噌ラーメンなどが人気商品になっていると話題になった(※4)。餃子の王将という看板は同じでも、店舗それぞれに個性があり、一店一店すべてが異なる魅力を持った店になっている、と言える。

※4 メシ通「日本一のメニュー数を誇る『餃子の王将』に行ってきた【餃子バリエがハンパない】」を参照。