入社早々、営業成績上位にランクイン

営業所に着くなり、事務手続きをさせられ、翌日から早速、保険勧誘の研修が始まりました。訪問先の玄関前に立ち、声をかける練習からさせられました。

まだ玄関にブザーもベルもなかった時代のことなので、玄関の引き戸の前で「ごめんください」と声をかけるところから始まります。

奥様が出てきてくれたら、「奥様でいらっしゃいますか」と丁寧な言葉で話しかけ、玄関先にお花が咲いていたら「きれいなお花ですね」などと、世間話から始めて警戒心を解き、家に上げてもらうというシミュレーションです。

毎日毎日、そんな練習をして、1カ月が過ぎたくらいから、実際に訪問営業をすることになりました。

私としては望んで始めた仕事ではないので、そう乗り気ではなかったのですが、やる以上は契約を取らなければならないと思っていたので、一生懸命やりました。

やってみてわかったのは、「自分は入りたいけど、主人の意見を聞いてみないとわからない」という奥様が多かったことです。

そのため、夜、旦那さんたちが帰宅し、夕食も終わって落ち着いた時間にしばしば伺うようにしました。

そのおかげで成績も上がって、入社早々上位にランキングされるようになり、営業所長に「これからも期待しているよ」なんて声をかけられたりしました。

夢中になれないものを売り続けることはできない

ところが、生命保険のセールスを始めて何カ月か過ぎたある日、突然の腹痛に見舞われたんです。あわてて主人が運転する車で救急病院に連れて行ってもらったところ、俗に盲腸と呼ばれる「虫垂炎ちゅうすいえん」を発症していることがわかり、即手術となりました。

もちろん、しばらくセールスの仕事はできません。

病院のベッドで、つくづくと思いました。「やっぱり生命保険の仕事は、ほどほどにしておけということかな」と。

ベッドで上体を起こしている女性
写真=iStock.com/show999
※写真はイメージです

営業成績はよく、それなりに多くの収入を得られたのですが、自分自身が夢中になれないものを売り続けることはできないとも感じました。

そこで、友人への義理も果たしたことだし、いい区切りになるからとやめさせてもらったんです。