あきらめることで知った人生のタイミング

とはいえ、当時の私は3人の子どもを抱える家庭の主婦で、末っ子はまだ9歳と手がかかる年ごろです。

そのころ、ポーラ化粧品の美容部員になるには、仙台まで行って講習を受けなければなりませんでした。心引かれながらも、自分の家庭環境を考えると、時期尚早とあきらめる他ありませんでした。

人生にはタイミングというものがありますよね。

どんなに望んでも、条件的にその望みを叶えられないこともあれば、思わぬ方向から予想もしなかった話が飛び込んでくることもあります。

私はあまり1つの考えに執着しないほうなので、「今やれないなら仕方ないな」と考えを変えました。

今の時代、あきらめることは、よくないことみたいな風潮がありますが、ときにはあきらめを受け入れることも必要なんじゃないかと思います。

少なくとも、あきらめることに罪悪感を抱く必要は、ないんじゃないでしょうか。

今、やれることをやって、いつか巡ってくるかもしれない「そのとき」を楽しみに待つ。それでいいと思うんです。

友人に請われて生命保険のセールスになる

やむなくポーラ化粧品のセールスレディになるのを断念した私ですが、まったく別の方向からやってきた話を断り切れず、セールスの仕事をしたことがあります。

友人が神妙な顔つきで私の家にやってきて、「どうしても堀野さんにお願いしたいことがあるの」と言ってきたんです。

どうしたのかと思って話を聞いてみると、「私、生命保険のセールスの仕事をしているんだけど、この間、会社に『やめます』って言ったの。そうしたら『あなたの代わりに誰か1人、この会社に入れてください』と言われてしまって……」と言うのです。

手を合わせている女性の手元
写真=iStock.com/Bangon Pitipong
※写真はイメージです

今、考えてみると、その人は個人事業主だったはずですから、そうした契約をしていたのかもしれませんが、そうでなければやめるもやめないも自由のはず。だから、おかしな話なのかもしれませんが、そのときは「そういうものか」と思ってしまいました。

彼女いわく「こんなことを頼めるのは、堀野さんしかいないの」と。

困り切っているように見えたので、とりあえず顔だけ出して友達としての義理を果たそうというつもりで行ったら、先方は迎え入れる気満々だったんです。