「普通の候補者として扱う」ことが最大の対策

一人の候補者と認めるということは、分析の対象にするということだ。ワンイシューに陥りがちな個別論点の対立を周到に避けながら相手の出方を伺い、自分たちの政策を一つのパッケージとして訴えることによって有権者の判断に委ねる。

今回の選対の判断は、政治的な立場を超えて、トリックスターと向き合う際の一つの指針になったというのが私の評価だ。

同時に、これはマスメディアの姿勢にも重要なヒントを与えている。

拙著『 「嫌われ者」の正体 日本のトリックスター』(新潮新書)を刊行して以降、メディア関係者から「トリックスター的な候補者をどう扱えばいいのか」という問いをもらってきた。私の解は「普通の候補者として扱う」だ。

彼らにとっては「マスメディアとの対立」は最大の養分の一つだ。メディアに取り上げられないという主張を自由にできる環境こそ「美味しい展開」なのだ。

したがって解はよりシンプルになる。

メディアは選挙の現場から学んで臆せずトリックスターの意味を分析し、光を照らしたほうがいい。光を当てることによって、影もまた伸びてくるものだ。彼らの行いもまた詳細に報じることでバランスはおのずと取れてくる。

トリックスターの存在をどう判断するかは、最終的には読者や視聴者を含めた有権者のものだ。冷静かつ合理的な人々が解を与えること。これを信じずに民主主義は成立しえない。

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