難しい法律知識も、楽しみながら理解できる
続いて「法律」の観点です。実は、このゲーム内では「抵当」「競売」「保釈」など様々な法律専門用語が登場します。このように説明すると、「仰々しいゲームだな」とさらに思われてしまうかもしれないのですが、こうした法律上の概念が、子供でも理解できるように、わかりやすく組み込まれていました。
「抵当って何のこと?」と子供に聞かれて、わかりやすく説明するのは至難の業かと思います。これがモノポリーの中では「建物や土地の権利カードを裏返すと、銀行からお金が借りられる。しかし、お金を返せなくなると、建物や土地が没収されてしまう」という形でルールに組み込まれています。
これを専門的に説明すれば「金銭消費貸借契約の担保として、債務者の不動産に抵当権を設定した」という状況なのですが、正直、これではよくわからないですよね。
小学生の頃の私がこのような説明を受けても、何を言っているのか全く理解できなかったと思います。複雑な考え方でも自然に且つ楽しみながら学べたのは、モノポリーならではの魅力だと思います。
現在、私は法学部で民法などの専門科目を勉強していますが、このモノポリーの経験のおかげで、「抵当権」「競売」といった概念をスッと理解することができました。“建物を抵当に入れた”ことのあるお子さんはあまりいないと思います。少なくとも私の周りにはいませんでした。
勝利するには「交渉力」も必要
そのため、大学生や社会人になってからいきなり「所有権がどうだ」「抵当権がああだ」といった話を学んでも上の空になりやすいのではないでしょうか。
お子さんが将来、法曹になるかどうかはさて置いても、法律の基礎知識はどの大人も知っておいたほうがいい大切な教養だと思います。特にこれは不動産の知識でもありますから、知っておいて損はないと思います。
最後に「政治」という観点です。モノポリーは“オセロや将棋と異なり、家族でにぎやかに楽しめる”と前述しました。なぜかというと、モノポリーでは「交渉」が重要な要素となっているからです。サイコロを振って土地の売買をするだけなく、購入した土地や建物を、他のプレイヤーと交渉して譲渡することも認められています。
例えば、1人のプレイヤーがたくさんの土地や建物を独占して、富豪に成り上がっているというケースです。このときは、それ以外のプレイヤーが協力し合って、財産を共有して富豪に対抗してみたり、プレイヤー間の資本力が均衡していれば、2対2の派閥を作って互いに牽制し合ったりということが起こります。国際政治の舞台を見ているようだと感じます。
経済力や軍事力のバランスが取れるよう強国と小国が連合したり、同盟を組んだりするのは、モノポリーで学べる「勢力均衡」の仕組みが政治の舞台にはたらいているからです。